国内で最大規模となる太陽光ファンドが登場した。ファンド規模は最大900億円を見込む。運用期間は約20年で、年平均の利回りを示す内部収益率(IRR)は5.5%を想定。日本生命保険が100億円の投資を決めており、長期の資金運用先を求める生命保険会社など機関投資家から資金を呼び込む。
ファンドは米ゼネラル・エレクトリック(GE)グループが組成した。GEが主体となって開発し、商業運転を開始した国内の太陽光発電所を投資対象とする。投資家は開発リスクを負わない。2016年に稼働した岡山県の久米南メガソーラー・プロジェクト(出力3万2000キロワット)など複数案件を取得した。最終的に大型の太陽光発電所7-10件を資産に組み入れる。取得資産は総額3600億円を見込む。
ファンド総額の3分の1を日本政策投資銀行、10%をGEグループがそれぞれ出資し、残りは機関投資家から出資を募る。既に463億円を集めた。日生のほか、JA三井リースが25億円、NECキャピタルソリューションが22億円、大同生命保険が20億円をそれぞれ拠出した。
日生、大同生命にとってはともに初の国内インフラファンドへの投資となる。日生・広報室の松木高士氏は「これまでも国内インフラファンドへの投資を検討してきたが、リターン目線が合わない等の理由で見送ってきた」とした上で「優良な組み入れ案件のパイプラインがあり、投資採算性や社会性の観点から魅力的な投資機会と判断した」と説明した。
大同生命・市場投資部の井川晃インベストメント・オフィサーも「昨今の厳しい運用環境の下、十分な利回りが期待できる」と述べた。海外でのインフラ投資を始めた当初から国内での投資機会についても調査、検討を進めてきた。両生保ともに環境・社会・企業統治(ESG)を重視する観点からも投資を決めたという。
「オルタナティブ祭り」
同ファンドの販売を担当する三井物産の全額出資証券子会社、三井物産オルタナティブインベストメンツの鴨崎晃社長は「利回りが高く、投資家の感触は非常にいい」と語る。取得する資産は固定価格買い取り制度(FIT)に基づく電力の販売価格が1キロワット時当たり36-40円と高価格での認定済み案件。過去の日照量の統計を基に保守的に見積もって利回りを算出したほか、風力発電などと比べて発電装置の不具合の発生率も小さいとして、期待利回りの下振れリスクは低いという。
鴨崎氏は「長期の運用を望む生保をメインに機関投資家から1件当たり20億-30億円以上を集めたい」として、今年度内にも最大900億円の資金調達を見込む。
16年に日銀がマイナス金利政策を導入したこともあり、太陽光ファンドなどのオルタナティブ(代替)資産に運用資金をシフトする動きは顕著になっている。
JPモルガン・アセット・マネジメントが日本の企業年金など123の年金基金を対象に行った運用調査でも、3月末時点のオルタナティブ資産の比率は08年度の調査開始以降で最高の16.5%にまで上昇。調査を担当した國京彬グローバル・マーケット・ストラテジストが「オルタナティブ祭り」と称するほどに関心は高まっている。一方、国内債券の比率は27.9%と調査開始以降で最低となった。
三井物産は16年を国内の大手機関投資家がオルタナティブ投資の強化に乗り出した年と位置付けており、20年までに国内で約25兆円のオルタナティブ投資の新規需要が出てくると予測。三井物産オルタナティブインベストメンツは、GEと組んで日本の機関投資家向けに海外での太陽光や風力などの再生可能エネルギー事業に投資するファンドの取り扱いについても検討している。